ブルックリン
ブルックリン(Brooklyn)
2016/アイルランド・イギリス・カナダ/112分
アイルランドの小さな町で母と姉と暮らすエイリシュ。能力はあるのに安定した仕事に就けないでいた。姉はエイリシュにニューヨークでの仕事を勧め、エイリシュは慣れない都会での生活を始める。あまりの心細さにアイルランドに帰ることばかり考えていた彼女だったが、イタリア系移民のトニーと出会い明るさを取り戻していった。そんなある日、アイルランドから突然の悲報が届き・・・。
「スパゲッティ」食べ方の特訓
トニーとの出会いでニューヨークの生活にも馴染み始めたエイリシュ。家族に会って欲しいと言われ、トニーの家に呼ばれることに。食べたことのないスパゲッティを上手に食べるために、スプーンとフォークを使って食べ方を密かに練習する。教えてくれたのは、同じ寮に暮らすお姉さんたち。ソースなしのスパゲッティでもエイリシュは苦戦していた。
1950年代にはスパゲッティを”食べたことない”ってことがあったんだなぁ。たしかに初めて食べるってなったら、フォークとスプーンを使って食べるのって難しそう!知らず知らずのうちに私もスパゲッティを食べられるようになっていたのか~。
* * *
トニーが「俺がアイルランドのダンスパーティーに来たのは、アイルランドの子が好きだから」っていう言葉には(なんだと~)と思ったけど、それでも彼の魅力に惹かれていく。エイリシュに対するトニーの想いの深さが徐々に伝わってくる。でもエイリシュは、あまり感情を表に出さないタイプだから、それに不安になっているトニーがまたいじらしく感じられた。
エイリシュが一時帰国したときの感情の揺れが、本作のハイライト。住み慣れた故郷の町、馴染みの友人、そしてエイリシュの帰国を望む一人暮らしの母。安定した仕事にも就けそうで、紳士的な素敵な男性とも出会った。このままアイルランドに身を置くことが、自分の人生にとって最善の選択のように思われる。たった一つ、トニーとの関係を断ち切ることができたら。
好きな人にはない魅力的なものを持っている人が現れたら、特に自分の理想に近い人だったら。途端に好きな人の不十分なところが目立ち、その人への想いが色褪せてしまったりする。比較して損得勘定で考えたり、好きな人からの想いすら重荷に感じて、自分の本当の気持ちもわからなくなってしまう。でも、好きな人を失ったときに失うものを想像すると?足りないところ以上に、その人を好きになった理由に目が行くはず。そんなことを言い聞かせるように考えながら、映画のポスターになったあのシーンでは、とっても嬉しくってウルッときた。
★Huluで鑑賞★